吉田こどもクリニック

役立つ情報

賢い小児救急のかかり方

1:小児救急医療はコンビニ医療ではありません

夜間や休日に行っている救急医療は、24時間利用できるコンビニエンスストアーと同類のものではありません。夜間や休日に行っている救急医療は、かかりつけ医の診察時間外の急病の時に、翌日まで待てない状態の時に利用する医療です。翌日まで待てる状態なら、お子様の今までの病気や薬の効き具合、副反応などを良く知っているかかりつけ医に診てもらうのがベストなのです。ここではそのような小児救急医療の賢いかかり方について分かりやすく解説します。当院の診療時間外での急病のときは、ぜひ参考にして、賢く小児救急医療をご利用ください。また救急に受診したほうが良いかどうかの相談は、電話で救急医療情報センター(18時~23時:045-201-1199)、かながわ小児救急ダイアル(18時~22時:#8000または045-722-8000)でも受け付けています。

2:救急かどうかは子供の全身状態と症状の観察から

子供の全身の状態と症状をよく観察して、以下の観察のポイントにチェック(レ)をしてみましょう。

観察のポイント
全身状態
 顔色が著しく不良。口唇が紫色。
 ぐったりして、明らかにいつもと顔つきも違う。
 ボーとしている。うとうとしてすぐに寝てしまう。
 意味不明な言動がある。
 水分が半日以上ほとんど取れていない。
 尿が半日以上出ていない。
             
以上の全身状態の項目の1つでも当てはまるときはすぐに、救急医療機関へ受診して下さい。当てはまらないときは、以下の症状の項目のどれに当てはまるかチェック(レ)をしてみましょう。
症状
 発熱
 けいれん(ひきつけ)
 咳、ぜーぜーする、呼吸が苦しそう
 嘔吐(吐く)
 下痢、腹痛
 その他
             
それぞれの症状の項目のページを参照の上、救急医療機関へ受診するか、翌日まで待って、かかりつけ医を受診するか判断してください。また、受診の相談を救急医療情報センター(045-201-1199)、かながわ小児救急ダイヤル(#8000または045-722-8000)で電話で受け付けています。

3:発熱(38℃以上)

こんな時は、すぐ救急医療機関へ行きましょう。
 生後3ヶ月未満で38℃以上の発熱がある。
 40℃以上の発熱がある。
 38℃以上の発熱に加えて、嘔吐と頭痛がある。
 38℃以上の発熱に加えて、目や唇が赤く、体に赤い発疹がある。
 発熱以外の症状を伴う。→その症状の項目も参照して受診を決めてください。
2ページの全身状態と上記の項目のいずれにも当てはまらず、水分も取れていれば、以下のことに気をつけて一晩様子をみて、翌日にかかりつけ医を受診しましょう。
発熱時に気をつけること
○ 発熱時は水分が失われるので、十分な水分補給が必要です。乳幼児には乳幼児用のイオン飲料をこまめに与えることをお勧めします。
○ 一般に発熱時にはいつもより薄着にして、布団にくるまないようにして下さい。但し、寒くてがたがた震えているのは熱が上がる時で、この時は暖かくしてあげ、震えや寒気がおさまったら薄着にしましょう。
○ 発熱していても、元気で機嫌が悪くなく、水分も取れていれば解熱剤は必要ありません。
○ 38.5℃以上の発熱で水分摂取不良、元気がない場合は、解熱剤を使用して構いません。 解熱剤は6時間あけて追加しても構いませんが、病気の勢いが強い時は解熱剤を使用してもなかなか下がりません。水分をしっかり補給して翌日受診して下さい。
○ 解熱剤がない場合は、市販の冷却シートやビニール袋に入れた冷たい水を額やわきの下に使用しても良いでしょう。乳児の額に市販の冷却シートを使用すると、緩んで鼻をふさぎ危険なことがありますので使用しないでください。

インフルエンザ流行期の発熱時の注意
 インフルエンザの診断は通常、お子さんの症状とウイルスを検出する迅速診断検査の両者の総合的な判断でなされますが、迅速診断検査は発熱してすぐには陽性になりません。
したがって、発熱してすぐに救急医療機関に受診されて検査をしても、ほとんどが陰性と出てしまいます。インフルエンザの特効薬といわれているタミフルは、発熱後すぐに飲まなくても、発熱2日以内に開始すれば十分効果があります。また、インフルエンザはタミフルを飲まなくても、合併症を併発しなければ、自然に治る病気です。したがって、インフルエンザの流行時期の夜間の発熱でも、前述の全身状態の項目が当てはまらず、特に気になる症状がなければ、翌日にかかりつけ医を受診することをお勧めします。

4:けいれん(ひきつけ)

けいれんすると、急に体の一部や手足をがくがくさせたり突っ張ったりして、意識がなくなり、目が上を向いたり、焦点が合わなくなります。
こんな時は、すぐ救急車を呼びましょう。
 けいれんが5分以上続く。
 5分以内におさまっても、繰り返す。
 顔色や、口唇の色がどんどん悪くなる。
 けいれんはおさまったが、意識がない(刺激しても起きない)、様子がおかしい。
こんな時は、すぐ救急医療機関へ行きましょう。
 けいれんはおさまったが、手足の動きがおかしい。
 嘔吐や、頭痛を伴っている。
 発熱のないけいれん。
 初めてのけいれん。 
 けいれん以外の症状がある時→その症状の項目も参照して受診を決めてください。
2ページの全身状態と上記の項目のいずれにも当てはまらず、すでにけいれんがおさまっている場合は、以下のことに気をつけて一晩様子を見て、翌日にかかりつけ医を受診しましょう。
けいれん時に気をつけること
○ けいれんに気づいたら、あわてて抱き上げたり、ゆすったり、頬をたたいたりしないで、患児を安全で平らな場所に、仰向けに寝かせてください。
○ 時計を見てけいれんの始まった時間を確認してください。衣服をゆるめ、吐きそうな場合は吐いたものがのどに詰まらないように、顔を横に向けてください。舌をかむのが心配で、割りばし等を入れると口を切ったりして危険ですのでやめましょう。
○ けいれんの状態をよく確認してください。特に目つきや手足の動きをよく見てください。
○ けいれんが止まったらその時間を確認してください。体温を測定し、けいれん後の意識の状態をよく観察しましょう。

熱性けいれんとは?
 発熱によりけいれんを起こすもので、乳幼児では比較的良く見られます。通常5~10分以内にけいれんは治まり、その後通常しばらく眠り、手足の麻痺や、意識障害などはありません。2回目の熱性けいれんと思われるときは、けいれんを予防する座薬を使用する方法もありますので、落ち着いていれば、翌日かかりつけ医を受診し相談してみましょう。

5:咳、ゼーゼーする、呼吸が苦しそう

こんな時は、すぐ救急医療機関へ行きましょう。
 呼吸が苦しいと言う。
 以下のような呼吸困難の所見が1つでもある。
    小鼻がぺこぺこ膨らんだりへこんだりする。
    胸骨の上下や肋骨の間がぺこぺことへこむ。
 唇が紫色。
    横になっていられず、すわっているほうが楽。
 呼吸が時々止まる。
 咳がひどく眠れない。
 急に咳き込んで止まらない。→異物を誤飲した可能性があります(コラム参照)。
 犬が吠えるような咳がひどく出る。
2ページの全身状態と上記の項目のいずれにも当てはまらず、ゼーゼーしていても眠れるようなら、以下のことに気をつけて一晩様子をみて、翌日にかかりつけ医を受診しましょう。
○ 呼吸に伴って、ゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえるのを喘鳴(ぜんめい)と言います。これは鼻から気管支への気道に炎症があり、気道が狭くなり、また気道からの分泌物(鼻水や、痰)がからんでいるときに聞こえます。加湿器などを利用して室内が乾燥しないように注意し、水分を十分取らせると良いでしょう。
○ 咳がひどいときも、室内が乾燥しないように注意し、水分を十分取らせ、背中を軽くさすったり、たたいてあげると痰が出やすくなり楽になる事があります。

誤飲したときの対処法
○ 子供が急に咳き込んで苦しそうなときは異物の誤飲が疑われます。
食事中や、何か異物を誤飲した可能性があるときは、まず口の中を見て、取り除けたら取り除いてください。
○ 何かをのどに詰まらせたことがわかり、呼吸ができない、呼吸困難の所見(本文に記載)があったり、顔色、口唇の色が悪くなるようならすぐに以下の処置をしてください。
○ 大人のひざの上にうつ伏せにして、頭を低い位置に置いて、肩甲骨の間を4、5回強く叩き、詰まっているものを吐き出させます。あるいは後ろから腕を回し、助骨の下で両手を握り、おなかを強く圧迫して腹圧をかけて吐き出させます。それでもうまくいかなければ、すぐに救急車を呼びましょう。

6:嘔吐(吐く)

こんな時は、すぐ救急医療機関へ行きましょう。
 頻回に嘔吐があり、水分を与えても嘔吐してしまう。
 乳幼児で嘔吐に加えて、時々激しく泣く。
 嘔吐に加えて、便に血が混じる。
 嘔吐物が緑色である。
 嘔吐に加え下痢もひどい。
 嘔吐に加えて、頭痛、発熱がある。
 舌が乾燥し、おなかの皮膚がしわしわで張りがない。
2ページの全身状態と上記の項目のいずれにも当てはまらず、数回の嘔吐で、少しずつでも水分が取れるようなら、以下のことに気をつけて一晩様子をみて、翌日にかかりつけ医を受診しましょう。
嘔吐時の注意
○ 乳幼児では寝ている時に嘔吐がある場合、吐いた物が気管に誤飲しないように、顔を横に向けましょう。
○ 吐いた物のにおいは嘔気を催すので、汚れ物はすぐにかたずけて、感染予防のために家族もよく手洗いをしましょう。
○ 衣類をゆるめ、胸やおなかを楽にして休ませましょう。うがいができる時は、口をゆすがせましょう。
○ 嘔吐がおさまり1時間以上して、嘔気がひどくなく、本人がほしがるようなら少量の水分を頻回に与えましょう。2~3回の嘔吐で落ち着いて、そのまま寝てしまうようなら、無理に水分を与えなくても翌日の受診でよいでしょう。
○ 嘔気がある際に与える水分は、水、薄めたお茶、(乳幼児には乳幼児用の)イオン飲料が良いでしょう。牛乳やジュースは消化が悪いのでやめましょう。落ち着いたら、野菜スープ、コンソメスープ、薄めの味噌汁等を与えてみましょう。食事は無理に与えてはいけません。
脱水症
嘔吐や下痢があり、水分が取れない場合に怖いのは脱水症です。以下に示す脱水症の兆候に注意しましょう。
 ぐったりしている。うとうとしてすぐに寝てしまう。
 舌が乾燥している。
 おなかの皮膚がしわしわになり、おなかがへこみ張りがなくなる。
 尿が半日以上出ていない。
以上が1つでも見られる時は、すぐに救急医療機関へ行きましょう。

7:下痢、腹痛

こんな時は、すぐ救急医療機関へ行きましょう。
下痢
 頻回の水様の下痢がある。
 便に血が混じる。
 下痢に加えて、嘔吐もひどい。
 舌が乾燥し、おなかの皮膚がしわしわで張りがない。
 下痢に加えて、ひどい腹痛がある。
腹痛
 ひどい腹痛がある。
 乳幼児が間歇的に泣く。
 おなかが異様に膨れている。
 歩くときやジャンプするとおなかの痛みが強くなる。
2ページの全身状態と上記の項目のいずれにも当てはまらず、下痢が数回で、腹痛もひどくなく、少しずつ水分が取れるようなら、以下のことに気をつけて一晩様子をみて、翌日にかかりつけ医を受診しましょう。
下痢や腹痛がある時の注意
○ 下痢便の回数と性状をよく観察して、メモしておきましょう。おむつをとっておき、翌日医師に見せると良いでしょう。
○ 下痢がひどいと脱水症(嘔吐のページを参照)になりますので、頻回に水分を与えてください。(乳幼児には乳幼児用の)イオン飲料、水、薄めたお茶、嘔気がなければミルク、母乳でも構いません。
○ 下痢や腹痛がそれほどひどくないときは、消化の良いおかゆ、うどんなどを少しずつ与えてください。下痢がひどいときは食事はやめて、水分補給のみにしましょう。

家庭でも行える浣腸
腹痛があり便が1日以上出ていない場合は、市販の浣腸をしてみても良いでしょう。浣腸により便がたくさん出て、血便もなく、腹痛が治まれば、様子を見てよいでしょう。実際、小児救急の腹痛の多くは便秘によるものです。子供は1日でも便が出ないと、ひどい腹痛を起こすことがあるのです。

8:その他の症状

ここでは小児救急でよく見られるその他の症状について説明します。
 発疹(皮膚のぶつぶつ)
 蕁麻疹?:蚊に刺されたような少し膨らんだ発疹が全身に出て、強いかゆみがあります。食べたものが原因のこともありますが、多くは原因不明です。発疹やかゆみがひどい場合は救急医療機関を受診してください。まれに、気道にも蕁麻疹が出来てむくみ、呼吸がゼーゼーしたり苦しくなることがありますので、この時は救急車を呼んでください。
蕁麻疹が少しでかゆみがひどくなければ、風呂などで温めず、虫刺され用のかゆみ止めの塗り薬で様子を見て良いでしょう。
 水ぼうそう?:全身に赤い発疹の上に水疱(水ぶくれ)ができ、通常痒みを伴います。発熱することもあります。かゆみがひどかったり、特に気になる症状がなければ翌日の受診で構いません。水ぼうそうのウイルスをおさえる薬がありますが、発症後2日以内なら十分効果がありますのであわてることはありません。また、この薬を使用しなくても自然に治る病気ですので、かかりつけ医に相談してください。
 その他の発疹:かゆみや痛みがひどくなく、全身状態の項目にチェックがなく、他に気になる症状がなければ、翌日にかかりつけ医の診察を受けましょう。
 やけど
 やけどをしたらまず患部を、水道水を流しながら最低10分間、出来れば20-30分冷やしてください。服が脱げない時は、服の上からでも構いません。そして、薬などは塗らずに救急医療機関を受診してください。状態により小児科医よりやけどの専門医のほうが良い場合がありますので、受診の際は医療機関に電話で問い合わせてください。その際、やけどの範囲、皮膚の状態(赤い、水ぶくれがある、色が黒い等)を伝えてください。
 頭部打撲
 頭を打った後にすぐ泣いて、意識がしっかりしており、頭部にこぶがあっても軽度なら、経過を見てよいでしょう。その際、嘔吐したり、うとうとする等意識がおかしいなどの全身状態の項目が当てはまるようになったら、すぐに救急医療機関を受診してください。頭部の検査が可能な病院を受診したほうが良い場合がありますので、受診前に救急医療機関か、救急医療情報センター(1ぺージ参照)に電話してください。
 異物誤飲 (たばこやその他の誤飲)
 救急にかかる必要があるかや処置法は中毒情報センター:045-262-4199に電話して相談してください(24時間対応)。

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